酒とアート、飲むと観るでノミルです

ラーメンよ


ラーメン、好きですか?

僕は、大学に入るまでラーメンという食べ物にそれほど興味はなかったのです。というより、ラーメンという食べ物に対して特別に情熱を持っている人がいるという事を知らなかった。京都の大学に入ったら、大阪と比べてラーメン屋の多さにも驚いたし、なによりもラーメンを語る人達がいるということに驚いたのものです。

ただ好きというより、もはや趣味としてラーメンが好き。お気に入りの店は何軒かストックしてるのは当たり前。三度の飯よりラーメンが好き。なんて呟いていたらラーメン食べたくなってきた…という人たち。

いや、たしかにラーメンというのは美味しい。けど、そこまで熱狂的に多くの人が語るラーメンという食べ物を僕はいまいちよくわからなかった。
それはなぜか?ひとつに生まれ育った大阪には専門的なラーメン屋が他府県と比べて少なかったというのがあるのかもしれない。

大阪で麺類といえば「うどん」です。だから定食屋には必ず「うどん」と書かれた看板が掲げられている。うどんがない定食屋などない。つまり、うどんの文化があまりにも強いものだから、ラーメンを食べるという文化の土壌がない。という説があるらしいのです。(最近はちょっとずつお店が増えてきているらしいけど)
まぁ、たしかに言われてみれば大学に入るまでラーメン専門店に入った記憶ってほとんど無い。

180円の激安ラーメンは高校生のときに食べてたけど、美味しいから食べていた訳ではない(失礼)し「あの店、美味いらしいから食べに行こう」という会話は無かったのではないかと思う。

だから、梅田の一風堂に行列ができているのをはじめて見たときもやはり驚いた。ラーメンを食べるのにこんなにも並ぶものなのか、と。

なので、「ラーメンを食べに行く」という行為を意識し始めたのは大学に入って、ラーメンを食べに行く人たちと一緒に行動するようになってからだ。しょうゆ、みそ、しお、というサッポロ一番にある3種類の味+とんこつだけではなく、様々なスープの種類があり、細かなカテゴリーがあることもそこで学んだ。天下一品をはじめとする京都のこってり系スープにはそりゃあたまげたもんだった。一乗寺にラーメンも食べに行った。美味しい担々麺があると聞き、三室戸まで車で行った。ご当地ラーメンもいくつか食べた。某なんとかましましのラーメンは食べたことはない。
なるほど、たしかにラーメンは奥が深い。京都という狭い場所でさえここまで複雑怪奇なのだから、これに東京、そして全国のご当地ラーメンなんかも含ませてしまったら、もはや一生の趣味、人によっては一生の仕事である。ラーメンライターなる職業があるのも頷ける話だ。しかもラーメン店は次々と現れ、そして消えていく。情報は日々アップデートされている訳だから、休む暇もなくラーメンを啜り続けなくてはならない。それは大変な趣味である。音楽のように時代によって流行り廃りもあるだろう。
そういう新しいラーメンの味を覚えた一方で、昔ながら中華そばの味も覚えた。

行列ができる訳でもなく、格別においしい訳ではない。しょうゆ味のまさしくスタンダードだ。テレビを見ながらボケーっと食べられるのもいい。そこでは味や店の雰囲気を批評する必要もない。ただ湯気の立つ温かいラーメンを食べに来るだけ。ラーメン好きにはこのような、人には言わないセーフゾーンのような存在の店もきっとあるのだろうと思う。胃袋を刺激するラーメンとの戦いに疲れたときに癒やしとして食べるのも、またラーメンなのだ。
ラーメンで思い出すのは伊丹十三監督の『たんぽぽ』(1985年)という映画だ。

オムライスのときにも出てきましたけど、主人公となる食べ物はラーメンである。売れないラーメン屋の店主(宮本信子)が、たまたま通りかかった食通のトラックの運転手(山崎努)に教えを請い、成長していくというストーリーで、それだけを聞くと、なんだか単純な話に思えるかもしれない。

だが、この映画の真のテーマは「腹を満たす為の食事から快楽としての食事(美食)まで、現代における食事とはなんなのか?」ということで、それを喜劇によって表現している。その本能的な食事と文化的な食事の中間地点として存在するのがラーメンではないか?ということなのだと思う。

この映画の冒頭で、ラーメンにたいするお作法というスケッチがある。先生と弟子(渡辺謙)がラーメン屋に来て、ラーメンを食べようとするのだけど、そこには食べ方のお作法というのものが存在するという。

弟子は「先生、最初はスープからでしょうか?それとも麺からでしょうか?」と先生に聞き、先生は「最初はまず、ラーメンをよく観ます」と応える。

どんぶりの中にあるスープ、麺、具をそれぞれ確認し、焼豚を箸で愛でるように撫でる。そして焼豚を右斜め上に移動させ、麺の下に隠す。このとき大切なことは、心のなかで焼豚に対して「あとでね」と声をかけることである。

もちろん、これは茶道や華道などのお作法をラーメンに置き換えたパロディだが、ラーメンが語られる食べ物である以上、そこには食する上での様式美というものがあるはずだ、ということだろう。
ラーメンは語られる食べ物だ。最初にラーメンは好きですか?と尋ねたが、僕自身はと言うとラーメンそのものより、ラーメンとラーメン屋さんとラーメン好きが取り巻く状況のほうに興味があるみたいだ。

2015-11-21 | Posted in danpen

ライター紹介

西出 元

Nomiru ディレクター、撮影、イラスト、会議中に腹が減ったと晩御飯へと促すことを主に担当。企画が進まない原因の一人。
ディズニーランドとUSJに行ったことがなく、それに対する憧れが高まっていき、ハードルが上がりすぎて逆に行けなくなっているが最近の悩み。
好きなお酒は辛口の冷酒。好きな肴は白子ポン酢。


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