酒とアート、飲むと観るでノミルです

2010.10.09 肥後橋の立ち食いカレー屋さん

IMG_1907

 

お腹が減った。
とてもペコペコだ。
音がなる感覚も
だんだんと短くなってきている。
なんだか歩くスピードだって
落ちてきた気がする。
なにか安くて良いランチを
食べれるところはないものか…。

その時ぼくは様々な食事処がならぶ
大阪梅田の地下街を歩いていた。
朝から兵庫で仕事があり、
また昼間にも梅田近辺で用事があったので
普段は京都の自宅に帰宅してからする
昼食を大阪で摂ることにしたのだ。

そう決めたのはいいのだけど
普段、ランチを外で食べるという
習慣がないものだから
お店選びで非常に迷う。
しかも大阪だ。
生まれ育った街ではあるが、
ランチとかそういうのは
大人の場所なので、
大学生から京都漬けになっていた
僕としては大阪のお店事情には
まったくもって詳しくない。
なので、
「そうだ、ここにしよう!」
という心に決めている
お店もないので、
いきあたりばったりになってしまう。
結果、探している途中で
面倒臭くなってしまい
立ち食い蕎麦に入ってしまうことも多い。

しかし、その日は
立ち食い蕎麦という気分ではなかったし、
立ち食い蕎麦では少々足りないほど
お腹が空いていた。
朝ごはんを食べる時間が
いつもより早かったせいものある。

では何が食べたいか?
それが問題だ。
これを食べたいという
イメージが定まらないときの
店探しほど困難を極めるものはない。

阪急梅田駅の新食堂街を
彷徨ってみるものの
これだ!と思えるものがない。
ランチサービスの
ハヤシライスには心惹かれたが
お店がものすごく混んでいて
思わず離れてしまった。
塩サバ定食って気分でもない。
ランチのにぎり寿司セットも
良いことは良いけど…うーん…。
ラーメン半チャンセットは
このあいだ食べたしなぁ…。
カツ丼は…ネタがかぶるから
やめておこう。

…駄目だ。
場所を変えよう。
人が賑わう阪急百貨店のコンソールを抜け、
梅田の地下街へと降りてくる。
すれ違う人は皆楽しそうな笑顔を
振りまいている。
俺はと言えば腹が減っている。
これほど腹が減っているのは
この付近で俺だけではあるまいか。
そういう錯覚にとらわれはじめていく。
気分をしっかり持て、
感覚を研ぎ澄ませ。
Don’t think . Feel .
(考えるんじゃない。感じるんだ)

そして、やってきました。
ドージマ地下センター。
しかし、俺は病魔におかされていた。
優柔不断という病魔である。
刺身定食、天ぷら定食、
しゃぶしゃぶランチセット、
パスタセット、安いお弁当。
どれをみても、
美味しそうには見えるが
なぜか決め手に欠ける。
というか、高い。
弁当を除いても
どれも800円オーバーだ。
いや、普通だろ。
と思うかもしれないが、
ワンコインランチの時代で
800円オーバーはなんだか贅沢な気がする。
ましてや1000円以上だなんて
誕生日じゃあるまいし
そんなの出せる訳がない。
1000円以上のランチなんて
おごられるためにあるようなものだ。
だからといって、
大阪で安いお弁当を買いますか?
いいえ、わたしは買いませんざます。
せっかく大阪に来たんだから、という
プライドが邪魔をするのでやんす。

もはや万事休す。
ここまでか。
ドージマ地下センターの終わりが見える。
俺のランチに遺された時間も
終焉を迎えたのかもしれない。
というか用事を済まして
早く京都に帰らないとダメだなので
時間的な余裕は本当に少ない。
でも牛丼とかコンビニは嫌だ…。

渡辺橋、肥後橋を渡り、途方にくれる。
涙が出そうになってきた。
すきやき丼セットという文字が見えたが
写真が日に焼けすぎて
まったくもって食欲をそそらない。

その時、気が向いて
ちょっと裏路地に入ってみようかと思った。
この辺りはオフィス街だ。
もしかしたらサラリーマンたちの空腹を満たす
良いお店があるかもしれない。
そう思って裏路地に入った瞬間に
「カレーと一品料理」という文字が見えた。
チェーン店じゃない、
あまり目立たない落ち着いた店構え。
そういえばさっき、
ハヤシライスを食べたかったけど
スルーしたな、ということを思い出す。
カレーとハヤシライスは違うものだけど、
乗り換えてもいい。
そもそもカレーは好きだ。
お店を覗いてみると
薄暗い店内に何人かのサラリーマンが
カウンターで立ちながら
カレーを食べていた。
立ち食いカレーか。
時間も余裕がないしいいかもしれない。
看板をみると
チキンカレー 並 580円
       大盛り 630円
とある。
値段もちょうど良い。
ひとつ目のピースがはまりさえすれば
次々と別のピースがはまっていく。
お昼のメニューはチキンカレーだけのようだ。
それもいい。
もう、迷いたくはない。

はじめてのお店に入るのには勇気がいるけど
ここはえいやっと入ってみた。
カウンターに立つとすぐさま水が置かれる。
あまりにも空腹だったので
思わず大盛りのチキンカレーを頼んでしまう。
お店は小さくてなぜか薄暗い。
だけどそれが大阪の街の喧騒から離れられて
心を落ち着かせる…
そうか、これがサラリーマンたちの
心のオアシスになっているのだな…って
だんだんと中年みたいなテキストを書き始めている。
(嫌ぁねぇ。歳をとるってのは)

注文して数分で出てきたカレーはとても赤い。
湯気とともに香ってくるそれは
辛そうな匂いではなくトマトの香りだ。
口に入れると、
さっぱりとしたトマトの酸味のあとに
カレーの辛味がやってくる。
見た目のような辛さではないが
それなりに辛さはある。
身体が少し疲れているな、と思ったときに
欲しくなるタイプの味だ。
さっぱりとしているので食べやすいし
辛さが身体を中から温めてくれる
やさしいカレーだ。

お肉ゴロゴロのごちそうのようなカレーも
インドカレーもいいけど、
こういう独自の進化をとげた
第3のカレーライスも良い。
こういうおいしいカレーに出会うと
とくにそう思う。
もちろんトマトカレーは世の中にあるけれど
トマトを前面に押し出しつつも
カレーとしてのバランスもしっかりと
保っているちゃんとしたトマトカレーなのだ。
あとで調べたら水を使わず
トマトとヨーグルトだけで煮込んでいるらしい。

だいぶ歩いたのとカレーの辛さで
火照った身体にあたる心地良い
初秋の風を感じながら店を後にした。

 

(カレーの写真を撮り忘れたので猫の写真にしましたことをお詫び致します)

2015-10-11 | Posted in hakariuri

ライター紹介

西出 元

Nomiru ディレクター、撮影、イラスト、会議中に腹が減ったと晩御飯へと促すことを主に担当。企画が進まない原因の一人。
ディズニーランドとUSJに行ったことがなく、それに対する憧れが高まっていき、ハードルが上がりすぎて逆に行けなくなっているが最近の悩み。
好きなお酒は辛口の冷酒。好きな肴は白子ポン酢。


同ブログのおすすめ記事