酒とアート、飲むと観るでノミルです

二日酔いに関するあれこれ

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朝から二日酔いだ。
昨日、飲みすぎたのか。どうなのか。と思い返しても、なかなかどれほど飲んだのか思い出せない。
思い出せないほど飲んだのか。
あるいは、思い出せない程度にしか飲んでいないのか。
どちらかは分からないが、いまの自らの現状を考えると前者なのだろう。
いや、しかし、頑張って思い返してみると、生中を2杯に、日本酒を一合、場所を移動し、ハイボール濃いめを2缶に、白ワインを1杯、缶ビールを1缶なので、やはりそれほど飲んでいないような気がするし、わりかし飲んでいるようにも思える。これくらいの分量だと、飲み過ぎなのか、適量なのか、いまいち分からない。

しかし、現状、脱水症状を起こしているせいか頭は脳みそが干からびてパリパリと音を立てそうなほどに痛いし、歯を磨こうとするともれなく胃酸を吐いてしまい、そのせいで喉まで痛い。胸焼けは当然ながら標準装備であり、喉と胃の間をなめくじの大群が行ったり来たりしているような感覚だ。
僕は、ふだん人から「酒が強いね」と言われるが、それは飲んでいる最中の出来事である、飲みすぎた際は、飲み終わって3、4時間もすれば悪酔いが始まり、トイレに立て籠もりとりあえず胃の中のものを全部出してしまう。
汚い話で恐縮だが、あまりにも吐きすぎて、自由自在に嘔吐ができるようになってしまった。自由自在というのは、喉の奥に指を突っ込んで吐くとかではない。もはや指なんていらず、少し前かがみになって、横隔膜のあたりにグッと力を入れれば、胃の中のものをぜんぶ吐き出すことができる。そんな馬鹿なとお思いかもしれないし、僕も自分自身であまり信じていなかったのだが、先日、手品の種明かしのコラムを呼んでいたら、カエルを飲み込んで、それをまた胃から出すという手品のことをやっていた。いわゆる人間ポンプである。それによると、胃の中にいるカエルを出すためには、腹筋を使って胃を圧迫し、それこそポンプと同じようにして、井の中の蛙ならぬ、胃の中のカエルが口から出てくるということとなる。つまりは僕の(自慢にならない)特技と原理としては同じあり、なるほどな、と思った次第だ。

二日酔いを直す方法はあるのだろうか。
これまで胃薬を飲んだり、コンビニに売っている小さな小瓶の薬を飲んだりしてみたが、ただただ苦かっただけで、あまり効いたためしがない。しじみの味噌汁が聞くというのも聞いたことがあるが、一人暮らしの、さきほどまでトイレに閉じこもっていた二日酔いの人間が、しじみを砂抜きをして、味噌汁をこさえることはなかなかハードルが高く現実的とはいえない。
飲むまえに飲むタイプの薬というか栄養ドリンクみたいなものもあるが、飲み行く前にコンビニを探してウコンを買い求めるのは気が乗らない。
中島らもの小説で、アルコール依存症の男、つまり自身がモデルである小説『今夜すべてのバー』でのワンシーンで、二日酔いの主治医が、それを直すためにビタミン注射を打つというのがあるが、経験の無い僕には、その効果が如何程なのか分からない。ただ、注射一本で二日酔いが治るのであれば、とても魅力的ではある。
しかし、残念ながら、今の僕には二日酔いを早く直す方法はわからない。色々と試してみたけど、だいたい昼過ぎになるまで気分が悪い。いまのところ、とにかく水分を取り、おしっこをして、中のアルコールを出すしかないような気がする。そして休日であれば寝てしまうことだ。
迎い酒は、結局のところ、苦しみを先延ばしにしているだけのような気がして、あまりする気になれない。

二日酔いになった朝はとうぜん気分も悪く、口の中は胃酸で若干酸っぱいので、食欲はほぼゼロに等しい。
そんな日の午前中はスポーツドリンクをちょっとずつ飲んで安静を心がけるが、昼過ぎにもなると、胃もだいぶ落ち着きをはじめ、むしろいつもの昼食時よりお腹が減っているような気がしてくる。胸焼けは若干残っているが、どちらというと栄養を取りたいという気分が勝ってくる。それもとても栄養価が高いものを。
これまた中島らもの本なのだが『アマニタ・パンセリナ』というドラッグ体験をもとにした名エッセイがある。普段聞きなれないドラッグの名前と、中島らもの軽快な文体に、大学生の僕はとことんやられてしまい、文庫本がボロボロになるまで読み込んでいた。本の登場人物であり、通っていた大学の講師だった「S」さんの授業も受けていた。(ジャコメッティに関する授業だったが、あまり覚えていない。当時の僕にとっては、授業よりも飲み会のときにされる思い出話のほうが刺激的だったからだ)その「S」と中島らもが、LSDもどきをやってハイになり、一晩中踊り続けてグッタリするシーンがある。

”とにかく、徹夜明けの体で、七時間も八時間も踊り狂った我々は、もう全身がたがたになっていた。全員ぐったり、倒れているところへ、Sがむくりと起きて
「メシを食いに行こう」
と言った。
「えっ?」
と我々は抗議したが、このSというのはパリで数々のドラッグの修羅場を踏んできた男である。こういうときは、無理にでも食べないと、どんどん衰弱していくのだ、というその一言には説得力があった。”

このあと彼らは近所のラーメン屋にいき、おいしくないラーメンを”食べねば死ぬ”思いで食べることになる。
僕はこのシーンがなぜか、すごく好きで、その影響により、二日酔いから回復し始めたときは、栄養価が高いというか高カロリーのものを食べたくなる。ラーメンとかカレーとか、その類のものだ。もちろん、胸焼けはしている。お腹は減っているが、食欲がある訳ではない。だけど、なんとなく、この状況は『アマニタ・パンセリナ』のあの状況に似ているんじゃないかと(あまり似ていない)思い、無理やりにでも、胃に収めようとして一人で中島らもごっこをしているのだ。酒だって合法ドラッグだし。

 

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2017-07-19 | Posted in hakariuri

ライター紹介

西出 元

Nomiru ディレクター、撮影、イラスト、会議中に腹が減ったと晩御飯へと促すことを主に担当。企画が進まない原因の一人。
ディズニーランドとUSJに行ったことがなく、それに対する憧れが高まっていき、ハードルが上がりすぎて逆に行けなくなっているが最近の悩み。
好きなお酒は辛口の冷酒。好きな肴は白子ポン酢。


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