酒とアート、飲むと観るでノミルです

夏風邪

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三日前から夏風邪を引いている。
夏風邪なんていう病気はないだろうから、単純に夏にひいた風邪ということになる。

月曜日の夜、寝付くまえになんとなく扁桃腺が腫れているような気がして、喉もなんだかイガイガするような気がしていたが、どちらもような気がするだけだったので、ような気がするということで済ませてしまおうと思い床についた。しかし、寝ているあいだに喉のイガイガは痛みへと進化し、そのおかげで呼吸も苦しくて、明け方に目が覚める。うがいでもしようと思い、身体を起こそうにも全身が重くて動けない。まるで布団の上に寝転がしておいた蝋人形が溶けて、布団とくっついてしまったかのようだった。もちろん、布団に寝かされたような蝋人形なんて見たことはない。おまけに頭が痛い。額に手をあてて、熱を図ってみたが、まだ熱はでていないようだ。半日くらい寝ていればマシになるだろうと思い、お昼まで寝ることにした。
火曜の昼。気温の上昇とともに、寝室の温度もあがり、寝苦しくなってきて、さすがに目が覚める。喉は痛い。身体はだるい。蝋人形なら跡形もなく溶け切っている感じだ。頭痛はひどく、頭のなかに大きな太鼓を入れて、そのうえにアボカドを2,3個くらい乗っけて、どんどこと打ちならし、リズムにあわせてアボカドがあちらこちらに飛び跳ねているようだった。。そして、関節が痛く、この症状の経験上、熱があると推測される。明け方と同じように額に手を当ててみたが、やはり明け方よりは熱く、それは室温の上昇が原因とは考えにくかった。

このまま、寝ておきたかったが、この室温で寝続けると熱中症になりかねない。すでに唇は乾いていて、脱水症状寸前だ。それに猫にご飯をあげなければいけない。明治の文豪のように女中を雇っていたら「おーい、トメさんや」と呼んで、パタパタと廊下を小走りする音が聞こえ「へぇ、なんでございましょう。旦那さん」と障子がガラッと開いて女中のトメさんがあらわれるかもしれないが、あいにく家には猫しかいない。それにいまは21世紀であり、女中という職業はおそらくホームヘルパーと呼ぶのだろう。そして、うちにはそのホームヘルパーもいないのだ。よって、自分でなんとかするしかない。21世紀だからメールだって確認しなければいけない。

熱とだるさでよろめきながら、寝室のある2階から1階へと降り、台所にいってまずは顔を洗った。起床後の習慣といよりも、火照った顔を水で冷やしたかった。ついでに歯も磨いた。これは習慣である。そして冷蔵庫を開けて、ミネラルウォーターを飲もうと思ったが、切らしていることに気がついた。おもわず舌打ちをしてしまう。しかたなく、生ぬるい水道水をコップに注いて飲んだ。ついでに猫の飲み水も変えてやる。

昼過ぎ。メールのやりとりもなんとか終えるものの、椅子に座っているのも苦痛になってくる。仕方なく1日休むことにする。
冷凍庫にいれて置いたアイスノン(ジェル状の氷枕)の偽物みたいなものを取り出し、そのまま寝室へと戻り、布団に倒れ込み、アイスノンの偽物を枕にして、そのまま眠る。
夕方、目が覚める。アイスノンの偽物は、すでに溶けて、少しひんやりする程度のやわらかい何かへと変わっていた。喉はまだ痛く、熱はあきらかに上がっている。体温計を探して熱を測る。7度6分。微熱だ。しかし、普段の僕の体温は35度6分程度であり、ちょっと熱っぽいなと思ったら大抵36度台の後半だったりする。つまり、7度6分でもそれなりに疲弊する。

家に食べるものがなかったので、着替えて近所のスーパーに買い物にいく。
さらっと書いたが、スーパーに行こうと思ってから、着替えるまでの間に20分、着替えてから実際にスーパーに行くまでに15分がかかっている。勇気と根気と諦めが揃うまで、それくらいの時間が必要だったのだ。
作る気力もないし、食欲もないので、野菜ジュースとウィダーインゼリーとアクエリアスと2リットルのミネラルウォーターを買った。喉が乾いていたので、スーパーから出た直後にアクエリアスを飲んでしまい、もう一本買っておけば良かったと後悔した。しかし、夕方の混み合っているスーパーにもう一度入る気にはなれない。高いけど、飲みたくなったらときに自販機で買おう。

自宅に帰り、野菜ジュースとウィダーインゼリーを身体に流し込み、布団に横になる。そのとき自分が寒いと思っていることに気づく。クーラーのない部屋の室温は20度台後半だ。むしろ熱いはずだ。寒い訳がないと気のせいだ思い、普段どおりタオルケットをお腹にかけたまま寝ているが、やはり寒い。完全に寒気がする。それも、もの凄く。弱設定の扇風機からの風さえ、木枯らしのように感じる。タオルケットを足先から首元までかぶるものの、まだ寒く、羽毛の掛け布団を引っ張り出してきて、それをかぶっていると、今度は寒気と実際の温度が喧嘩しあい、頭がおかしくなりそうだったので、掛け布団は布団の端によせて、寒気がひどくなった時にだけ、羽毛布団を抱きまくらのようにして抱きつくことにした。
そのころから熱は上がり続け、22時頃には8度6分にまでなっていた。頭痛はさらにひどく、昼間は2,3個だったアボカドは10個くらいまで増えていた。身体は煮すぎたネギにようにクタクタになっていた。枕元においてある水をコップに注いで飲むのも一苦労する。
そのころから僕の眠りは浅くなり、明け方まで大量の夢を見た。まったく脈略のないシーンをつなぎ合わせたアートシネマを永遠に見せられているかのようだった。現実だったら、そのような映画を見たら寝ることもできるが、夢の中ではすでに眠っているので、眠ることもできない。スタンリー・キューブリックの映画である『時計じかけのオレンジ』で、主人公のアレックスが治療という名の拷問を受ける場面がある。その拷問のひとつに、まぶたが閉じないように機械を取り付けられ、たびたび目薬をさされ、強制的にバイオレンス映画を永遠に見せられるというシーンがあるが、それに近いものがある。
目が覚めると、今度は頭痛と寒気をはじめとする風邪の諸症状が待っている。目が覚めるたびに、時計を見て時間がそれほど進んでいないことに落胆し、体温計で熱を測っても熱は下がっておらず、さらに気落ちする。これほど辛い目に合うのであれば、無理をしてでも夕方にドラッグストアにいって風邪薬を買うべきだったと思うが、時既に遅し、時刻は午前2時。こんな時間に京都で開いているドラッグストアなんて存在しない。
なにごとも気づいたときにはいつだって遅いのだ。

午前5時。相変わらず浅い眠りを繰り返す。熱は8度3分。少し下がり始めるも、身体の辛さは変わらず。体力も限界に近づきつつあるので、最終手段である市販の解熱剤としても効果がある痛み止めを使うことにする。本来であれば、風邪だったら自然治癒が一番良いと思うのだけれども、体力的にも精神的にも限界が来つつ在る。それに少し下がったということは、熱のピークは過ぎたということで、薬でさげても問題ないだろう。(もちろん、素人判断なので真似はしないでほしい)なによりもこの頭痛から逃れたい。
痛み止めを飲んでから、30分ほどで痛みが薄れていくのが実感できた。頭のなかで暴れていたアボカドも理性を取り戻したようだった。熱も夕方と同じ7度6分まで下がっていた。

時刻は午前5時30分過ぎ。
僕はようやく落ち着いた眠りを取り戻そうとするが、その瞬間、世界が活動し始めようとする音に引っ張られてしまう。
その時刻、すでに窓の外はぼんやりと青く、家の前を走り去る新聞配達のバイクの音や、少し遠くの線路からは始発の電車が走る音が聞こえる。もうまもなく、散歩をする老人たちが交わす朝のあいさつが聞こえてくるだろう。そしてセミたちが鳴き出しはじめる。季節は夏だ。
僕は枕に顔を埋めてその音を聞いている。そして、早朝に聞こえる音を一通り聞き終えたころに、まるで確認作業を終えたように眠りについた。

木曜日午前9時。
熱がぶり返す。
諸症状復活。
あきらめてドラッグストアに行く。

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2017-08-11 | Posted in hakariuri

ライター紹介

西出 元

Nomiru ディレクター、撮影、イラスト、会議中に腹が減ったと晩御飯へと促すことを主に担当。企画が進まない原因の一人。
ディズニーランドとUSJに行ったことがなく、それに対する憧れが高まっていき、ハードルが上がりすぎて逆に行けなくなっているが最近の悩み。
好きなお酒は辛口の冷酒。好きな肴は白子ポン酢。


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