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シン・ゴジラ そのあとに

今回の記事には多少のネタバレが含まれています。
まずは先入観なく『シン・ゴジラ』を観られることをオススメします。

 

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『シン・ゴジラ』を観てきました。
初日の第2回目。平日の真昼間に。

良い意味で期待を裏切られました。
カメラワーク、編集、凝りに凝った設定、満載のフェチズム、特撮に対する異常なまでの愛情、オマージュの数々、徹底的なリアリズム、ありそうに見せかけて全然無い政治的な意味合い、第1作目へのリスペクト、偏屈で潔癖な女性キャラ、様式美、形式美、エトセトラエトセトラエトセトラ・・・・どこを切り取っても100%の庵野秀明の映画でした。

それにしても、あそこまで大きさを表現できたゴジラは初めてではないでしょうか。
特に、予告編でも流れたゴジラの尾が上空をかすめていく表現。

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もちろん、これまでのゴジラでも巨大さの表現というのはなされていたのですが、その表現というのがビルなどの対象物がありきの大きさの表現が多かったのです。なので、どうしても引いた映像になってしまう。

第1作目では足元のアップや、砂浜に残された足あとなど、様々な趣向を凝らした演出がされていたのですが、シリーズが重ねられていくとゴジラの大きさが作り手も観客にとっても当たり前となっていったのか、その巨大さの表現が省かれるようになっていきます。そうなるとゴジラというものが認識できるけど、だんだんと怖さのようなものが失われていき、どちらかというヒロイックなキャラクターとしてのゴジラとして表現されていく。
もちろん、それが悪い訳ではない。だけど『シン・ゴジラ』の大きさへの演出方法を観ると、ゴジラファンとしては「あぁ、庵野監督は本気で第1作目のゴジラをもう一度、自分たちの手で作りなおそうとしているんだな」と思う訳です。

リブートとはすなわち、いままで積み重ねられてきた不必要な当たり前をゼロに戻し、更地にした上で本質を見出し、再構築することに他なりません。

それがゴジラの大きさを表現だったり、CGで目指したのが初代ゴジラの着ぐるみのゴムの質感であったり(もちろん、これもゴジラと言えば、着ぐるみだよね!というのではなく、あのゴツゴツとした独特のゴムの質感こそがゴジラのならではの特徴を表している本質だと考えたのだと思います)、ゆっくりとした歩き方であったりと、映画表現におけるゴジラの本質とはなんなのか、ということが徹底的に考えぬかれたこそ、誰も見たことがない全く新しい庵野ゴジラが生まれたのだと思います。

 

ところで『シン・ゴジラ』を観て面白いと思ったのであれば、ファンとしてはやはり初代ゴジラも観て欲しいところ。
比較として観るべきは、やはり、時代性でしょう。初代ゴジラが制作されたのは1954年。太平洋戦争集結から9年後、平和が確立されはじめたものの、戦争の記憶が残っているころです。そして当時は水爆実験の全盛期でした。原爆を落とされた日本としては不安や恐怖がよみがえるのも当然の時代です。そんな時代に、核から生まれ放射能を撒き散らし、都市を破壊するゴジラが、日本人にとって特別な存在になったのも納得のいく話です。
そして2016年。3.11以後の現代の日本にとっての恐怖や不安とはなんなのか、ということを考えてみるのも面白いかもしれません。

ゴジラ

原水爆実験の影響で、大戸島の伝説の怪獣ゴジラが復活し、東京に上陸。帝都は蹂躙され廃墟と化した。ゴジラ抹殺の手段はあるのか・・・。戦後の日本映画界に特撮怪獣映画というジャンルを築いた、記念すべきゴジラ映画第1作。核の恐怖を描いた、本多猪四郎の真摯な本編ドラマと、円谷英二のリアリズム溢れる特撮演出が絶妙のコンビネーションを見せ、「ゴジラ」の名を一躍世界に轟かせた傑作。 TM & (C)1954 TOHO CO., LTD.

 

もうひとつ、読むとなお『シン・ゴジラ』が面白くなる小説が小松左京の『日本沈没』。
『日本沈没』の映画版を監督の樋口真嗣を担当し、庵野秀明も設定協力をしているためなのか、『日本沈没』のアイデアを『シン・ゴジラ』でも使用しているようなシーンが散見されます。特に(なぜか映画版では描かれなかった)日本が壊滅する可能性があるときに、一般人の視点ではなく政府のなかの人間達が国をどのように救えばいいのか、疎開するにしても受け入れ先はどうするのか、といった問題が勃発するシーンは小説版『日本沈没』を参考にしているではないかと思います。もちろん『日本沈没』の小説自体も面白いので、興味が在る方は是非。樋口真嗣が監督した映画版も特撮シーンが見事なので、こちらも是非みて欲しいところです。

日本沈没(上)

伊豆・鳥島の東北東で一夜にして小島が海中に没した。 現場調査に急行した深海潜水艇の操艇者・小野寺俊夫は、地球物理学の権威・田所博士とともに日本海溝の底で起きている深刻な異変に気づく。 折から日本各地で大地震や火山の噴火が続発。日本列島に驚くべき事態が起こりつつあるという田所博士の重大な警告を受け、政府も極秘プロジェクトをスタートさせる。 小野寺も姿を隠して、計画に参加するが、関東地方を未曾有の大地震が襲い、東京は壊滅状態となってしまう。 全国民必読。二十一世紀にも読み継がれる400万部を記録したベストセラー小説。

 

そして話題にもなった自衛隊出動云々の話であれば押井守監督の『機動警察パトレイバー2The movie』もオススメ。こちらも、平和である東京で予測しないような危機に陥ったとき、国を守る立場の人間はどのように立ち振る舞うのか。という点でも共通するテーマがあります。

EMOTION the Best 機動警察パトレイバー2 the Movie [DVD]

2002年冬。横浜ベイブリッジに謎のミサイル投下…!
報道はそれが自衛隊機であることを告げるが、該当する機体は存在しなかった。これを機に続発する不穏な事件は警察と自衛隊の対立を招き、事態を重く見た政府は遂に実戦部隊を治安出動させる!! 東京に〈戦争〉を再現した恐るべきテロリストを追って、第2小隊最後の出撃が始まる!

 

ということで『シン・ゴジラ』を観た後に観たり読んだりすると、世界が深まる(であろう)3つの作品をご紹介しました。

この作品を観て、もう一度『シン・ゴジラ』を観るとまた違った発見があるかもしれませんよ!

では、また。

 

2016-08-02 | Posted in hakariuri

ライター紹介

西出 元

Nomiru ディレクター、撮影、イラスト、会議中に腹が減ったと晩御飯へと促すことを主に担当。企画が進まない原因の一人。
ディズニーランドとUSJに行ったことがなく、それに対する憧れが高まっていき、ハードルが上がりすぎて逆に行けなくなっているが最近の悩み。
好きなお酒は辛口の冷酒。好きな肴は白子ポン酢。


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