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ポケモンGO の 拡張されたもうひとつの現実

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『ポケモンGO』をやり始めて、改めて気づいたのは『ポケットモンスター』の世界が、70年代の少年たちがつかの間に見ていた夢の日本の風景なんだな、ということ。

ポケモンの生みの親である田尻智さんのインタビュー本でも語られている通り、70年代の日本は劇的な変化の年だった。

郊外都市の開発は急速に進み、近代的な建物の周りには、まだ草原や田んぼ、畑や沼地や沼があり、郊外都市に住む都営住宅や団地に住む子どもたちにとっては格好の遊び場になった。
しかし、それは数年後には住宅地となり、少年たちは成長し、インベーダーゲームに没頭するようになった。やがて、インベーダーゲームにハマった理系の少年たちはマイコンブームに出会い、コンピュータが人々の生活を豊かにすると信じていた。(スティーブ・ジョブズがAppleを創ったのも77年である)

ポケットモンスターは、そんな激動の変化で生まれては消えていった一瞬の風景から生まれた産物だ。
郊外都市から始まる物語。人と自然(ポケモン)が共存する世界。モンスターボールをはじめとする発展した人々に寄与するテクノロジー。この、ある種ユートピアのような世界観は70年代に少年期を過ごした田尻智ならではの創造物であることは疑う余地もないだろう。

いま、僕たちは、スマートデバイスをかざすことで、現実の世界を、40年前の日本が現代になろうとし始めたころの少年たちの夢の世界とを重ねあわせている。それもテレビやゲーム機の中ではなく、拡張された現実の世界でだ。

今日、駅の前でカイロスが現れたときに、思わず「あっ!」と言う声をあげてしまった。
僕はこの時に、これまでにないほどゲームでリアリティを感じてしまった。それは限りなくリアルに近いリアリティだ。
当たり前だけど、ポケモンはリアルな造形ではない。デフォルメされた可愛らしいキャラクターである。しかし、それでも、僕たちがいま立っている場所に、パッと現れたとき、そして、スマートデバイスのカメラを通して、現実の駅前の風景に存在しているポケモンを確認したとき、現実と幻想の境界線が曖昧になったときに見えるもうひとつの世界。そこに僕は一瞬存在して消えていった70年代から生まれたもうひとつの現在が現れたような気がしたのだった。

田尻 智 ポケモンを創った男 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

世界中にブームを巻き起こした『ポケットモンスター』―この大ヒットゲームは、いったいどこからやって来たのか。その中心人物・田尻智が、昆虫採集に熱中した幼少時代、郊外での暮らし、モラトリアムな青年期、会社設立、そして『ポケモン』での成功まで。ビデオゲームにすべてを捧げた苦難と熱狂の日々を語る。羽海野チカとの対談を文庫特別収録。解説エッセイはブルボン小林。

 

 

 


2016-07-25 | Posted in hakariuri, ポケモンGO倶楽部

ライター紹介

西出 元

Nomiru ディレクター、撮影、イラスト、会議中に腹が減ったと晩御飯へと促すことを主に担当。企画が進まない原因の一人。
ディズニーランドとUSJに行ったことがなく、それに対する憧れが高まっていき、ハードルが上がりすぎて逆に行けなくなっているが最近の悩み。
好きなお酒は辛口の冷酒。好きな肴は白子ポン酢。


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