酒とアート、飲むと観るでノミルです

ノミル編集長、ひとたんの日記です。

20160718 「FAKE」を観てきた

映画「FAKE」を観てきました。
※この記事は映画『FAKE』のネタバレが含まれています。
この映画は、ゴーストライター騒動の佐村河内守を森達也監督が取材したドキュメンタリー映画です。

今まであまり注目されてこなかった、佐村河内氏と奥さんを含めた、佐村河内夫妻の暮らしや考えていることを丁寧に描いていて、非常に興味深かった。というか、おもしろかった。

騒動自体については、身体障害者の天才という切り口はあまり好きではなかったし、クラシック音楽もあまりよくわからないので佐村河内と新垣の作品について良し悪しが判断できないということもあって、当時僕はあまり注目していませんでした。
ただ、メディアの熱狂ぶりについてはすごく違和感があったことを覚えているので、やはりこの映画は観たいと思っていました。

で、感想としては、いろいろなポイントがあって難しいのですが、一番純粋な感想として、この佐村河内という人が、「小心者で頭が良くて口が上手い、決して悪人ではないけれど善人でもない」という、ありきたりな人柄だということが伝わってきて、すごく安心した。
やはりディティール、感音性難聴の診断書や新垣さんに伝えるための指示書、騒動の時にはしっかりと報道されなかったネタがしっかり見れて、それもおもしろかった。

まあ、メディアというものの、情報の真偽や本質ではなくて数字に踊らされる特性って怖いよね、というような、最近特に話題になるテーマを考えさせられる、良い映画だな、と思いました。

ただ、この神山氏の寄稿を読むと、すごく苛立ちを感じた。

http://blogos.com/article/178313/

神山氏は、かの騒動の時に、「まだ手話終わってないですよ!」と会見で喧嘩を売っていた人で、あの騒動でずいぶん有名になった人です。

で、彼のテキストを読むと、ジャーナリズムとドキュメンタリーについて、森監督を批判している部分がある。
「この作品は、ジャーナリズムではない。単なるエンタテインメント作品だ」
ドキュメンタリーは客観ではないし、「被害者(この場合は、佐村河内に”利用された”被災地の少女かな)」がいる以上、公平公正なんて馬鹿げているかもしれない。と森監督本人もわかっていると思う。
もっと言えば、この神山氏も、もちろん被害者を救ったのかもしれないし、佐村河内氏のペテンを暴いた功績はわかるけれど、
同時に、当時のメディアクライシス状態の先頭に立ち、商売としてもうけた人である。
ジャーナリズムを語るなら、一方向の情報しかない状態の危険性という、当たり前の事は理解していると思う。
そうならば、神山氏はこの映画を見て、
「ようやく反対側、佐村河内視点の情報が出てきたか、これでこそしっかりと例の騒動を検証できるね、よかったよかった」
ぐらいのことは言って欲しかった。(佐村河内がまずは被害者に謝罪してからだ!という神山氏の考えはわかるが、神山氏は「被害者」ではないと思う。あくまでジャーナリストとして。)

また、一方で、佐村河内氏にも大きな疑問が残った。映画の前半部分で、テレビや雑誌で取り上げられていることに対して、佐村河内氏は嫉妬と苛立ちを見せる。ここはやはり良くないと思う。
自分だけが悪いわけではない。
もちろん、そう。だけど、やはり被害者もいて、また新垣氏とはパートナーであったわけだ。
パートナーというほど対等だったかどうかは怪しい。具体的に金銭がどれぐらい動いていたか、はわからない(映画の中で佐村河内氏は「結構な額を払っていた」と言っていた)けれど、やはり取り分として新垣氏の方が少なく、彼を利用していたのは間違いないと思う。
なら、新垣氏の現状について、
「元相方が経緯はともかく、スポットライトを浴びてこれだけ活躍できている。ずっと自分と組んでいたらこうはならなかったよね。よかったよかった」
ぐらいのことは言って欲しかった。

以上が僕の感想です。
僕も結構思い込みの激しいタイプの人間なので、この感想はずいぶん偏っていると思う。
京都での上映はもうほぼ終わりに近くなっているけれど、ぜひ一度観てみてもらって、感想を聞かせて欲しいと思います。

僕が観たのは京都シネマでした。
http://www.kyotocinema.jp/

写真は映画を観る前に飲んだ、でっかいハイネケンです。サイズ感が伝わらない。

2016-07-18 | Posted in hitogoto

ライター紹介

伊藤 仁

料理研究家。料理好きのふとっちょ。よくしゃべる。声がでかい。
好きなお酒は不老泉(赤ラベル)。好きな食べ物は豚の角煮。


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